乳房外ページェット病(EMPD)における陰性荷電部位の分布と酵素消化性をcationic goldを用いて検討した。その結果から、EMPDがエックリン汗腺へ分化しているのか、あるいはアポクリン汗腺へ分化しているかを明らかにした。EMPD組織を固定後Lowicryl K4Mに包埋し光学顕微鏡用と電子顕微鏡用の切片を作成した。切片上でcationic goldを用いて、pH2.0あるいはpH7.4で標識した。光学顕微鏡観察は銀増感後に行った。Cationic gold標識前にneuraminidase、chondroitinase ABC、heparitinaseによる消化を行い、陰性荷電部位の酵素感受性を検討した。約20%のページェット細胞の細胞質がpH2.0のcationic goldで強く標識された。電顕で観察すると、ページェット細胞の細胞質に存在する電子密度の低い空胞が標識されていた。これらの陰性荷電部位はneuraminidaseにより消化されたが、chondroitinase ABCやheparitinaseによって消化されなかた。したがって、EMPDはアポクリン汗腺型の陰性荷電部位を発現しており、エックリン汗腺や表皮の陰性荷電部位とは性質が異なっていた。これらの結果はEMPDがアポクリン汗腺へ分化していることを示していた。 人間の汗にはEGFが含まれ、人汗腺にはEGF受容体が存在することが知られている。人汗腺における総EGF受容体と活性型EGF受容体分布を検討した。活性型EGF受容体に特異的な抗体を用いて、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて観察した。エックリン汗腺では分泌細胞と汗管細胞の核に活性型EGF受容体が存在した。アポクリン汗腺では分泌細胞の細胞質と核に活性型EGF受容体が存在した。これらの結果はEGFは汗腺分泌細胞で産生されinternal autocrineの機序で分泌細胞自身の機能を調節し、汗管にはparacrineの機序で機能を調節していることを示している。
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