BALB/cマウスをTNCBにて感作した後、同一部位に隔日でTNCB外用をくり返した。同部位より経時的に生検をおこない、表皮、真皮より各々RNAを抽出した後RT-PCR法を用いて増幅し、各種サイトカイン(IL-1、TNF-α、IL-2、IFN-γ、IL-4、IL-10)の産生を定量的に検討した。結果は急性期の表皮におけるIL-1、TNF-αのmRNA発現はTNCB刺激数時間から10時間で高値を示し、以後漸減し、IL-10mRNAの発現の上昇を認めた。慢性期においてはIL-10mRNAの発現がTNCB刺激直後から認められた。一方真皮においては急性期にはIL-2、IFN-γのmRNA発現がTNCB刺激数時間から10時間で著明に増加した。慢性期にはIL-4やIL-10のmRNA発現がTNCB刺激数時間で著明に上昇し、IFN-γ、IL-2のmRNA発現は抑制された。なおNiの皮内注射により感作したマウスを用いてNiのくり返し塗布をおこなったところ、TNCB外用時とほぼ同じ傾向が観察された。これより抗原刺激をくり返すことにより、局所皮膚におけるサイトカイン産生パターンがTh1優位からTh2優位へ移行することが推測された。 次いで、抗原によるくり返し刺激の前と後にNiを経口投与したところ、前投与では皮膚炎の出現は明らかに抑制され、後の投与では投与しなかった場合とほとんど変わりなく皮膚炎が惹起された。また刺激部の生検を経時的におこない、表皮、真皮より各々RNAを抽出し、RT-PCR法を用いて各種サイトカインの産生を検討したところ抗原刺激のくり返し前に経口投与を受けたグループでは、表皮におけるIL-1、TNF-αのmRNA発現は上昇を示さなかった。また真皮ではIL-2、IFN-γのmRNA発現は低値であり、IL-4、IL-10のmRNA発現の上昇が認められた。くり返し刺激後に経口投与を受けたグループでは、サイトカイン産生パターンは経口投与しない場合と同じであった。
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