乾癬においては表皮細胞のcell cycleが著明に短縮しており、この事が乾癬における表皮細胞増殖の基本的変化であると考えられている。この乾癬表皮細胞のcell cycle亢進メカニズムを明らかにするために、本年度はプロテアソームとサイクリンの正常ヒト皮膚内局在を生化学的、免疫組織学的に明らかにした。 1。プロテアソームの皮膚内局在 プロテアソームは、生化学的にはその活性は顆粒層から有棘層で最大を示し、角層、真皮では認められなかった。免疫組織学的にも、顆粒層から有棘層の細胞質、核に強い染色性を示し、角層、真皮成分は染色されなかった。 2。表皮ケラチノサイトの分化とプロテアソームとの相関 プロテアソーム活性はケラチノサイトの分化に伴って増加した。プロテアソームmRNAの発現量もケラチノサイトの分化に伴って増加した。 以上の結果はプロテアソームがケラチノサイトの分化に強く関与している事を示唆している。 3。サイクリンの皮膚内局在 サイクリンAは正常ヒト表皮には認められなかったが、乾癬表皮では強く認められた。一方サイクリンDは正常ヒト表皮、乾癬表皮ともに認められなかった。この結果は表皮の増殖にはサイクリンAが強く関与していることを示している。 今後、サイクリンとプロテアソームの相互作用を、サイクリンの分解速度とプロテアソームの発現量を調べる事により明らかにしてゆきたい。
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