研究概要 |
研究代表者はユタ大学のグループと共同で,すでにそれぞれのエクソンを特異的に増幅するプライマーを60全てのNF1エクソンについて作製し,種々のNF1遺伝子研究に使用している.このプライマーでpolymerase chain reaction(PCR)法を行い,さらに21M13,M13RP1ユニバーサルプライマーを利用して,size-shift assay,singl strand conformation polymorphism(SSCP)法,magnetic beadsを利用したdirect sequence法といった手技を用いて遺伝子変異の解析を行った.我々は,20名のNF1患者の末梢血中血球分画より抽出したconstitutional DNAを被験対象に,上記手法を用いてNF1遺伝子の60エクソン全てを解析し,報告した.この検索では4例のsmall insertion or deletion,4例のsplice mutation,2例のnonsence mutation,ならびに1例のamino acid substitutionの合計11例のNF1遺伝子変異を検出している.これにより本邦におけるNF1遺伝子変異のDNA診断が可能になったものと考える. NF1遺伝子のsomatic mutationについて,我々は1例のNF1患者の神経線維腫より抽出したDNAを被験対象に上記方法を用いて変異の検索を行い,4bpのsmall deletionであるsomatic mutationを検出している(Shunichi Sawada,et al.,Nature Genetics:Vol.14,p110-112,1996).この結果により,すでにAPC遺伝子等で報告されている遺伝子におけるsecond hitがNF1遺伝子でも確認された.今後さらに多くの良性腫瘍(神経線維腫,神経膠腫,髄膜腫など),悪性腫瘍(悪性神経鞘腫など)を被検材料として,NF1におけるsomatic mutationを検索する計画があり,すでに米国ユタ大学の遺伝子研究所のグループ(Dr.David H.Viskochil,Dr.Smita M Purandareら)と共同で行う予定である.
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