研究概要 |
1) UVA照射による実験結果について マウスの背部皮膚を用い、UVA照射群ならびにPUVA施行群の2群に分けて実験を行った。その結果、PUVA施行群の一部の表皮にヘマトキシリン・エオジン染色で赤く染まる好酸性顆粒の出現が見られ,epidermolytic hyperkeratosis(EHと略す)に類似の所見が認められた。この好酸性顆粒の性状について、ケラチンを主とした免疫組織学的検討を行ったが顆粒の性状を同定するには至らなかった。おそらくはケラチンの凝集塊と思われるが、その他の物質である可能性も否定できないといった段階である。 2) Persistent actinic epidermolytic hyperkeratosis(PAEH)におけるケラチンについて PAEHはケラチンの凝集塊の形成が特徴的である。そこで病巣部のケラチン凝集塊につき、いかなるケラチンの凝集塊かにつき光顕ならびに電顕レベルで免疫組織化学を用いて検討した。その結果、ケラチンの凝集塊はケラチン1とケラチン10から成ることが判った。 3) PAEHの病因ならびに分類に関する考察 PAEHの病巣部のケラチン凝集塊がケラチン1とケラチン10から成ることが判ったのは大きな成果である。研究期間内には遺伝子レベルでの検討にまでは至らなかったが、PAEHも先天性のEHと同じくケラチン1とケラチン10の遺伝子mutationによる可能性が考えられ、誘因としては強い太陽光線の照射が最も考えられると推測した。分類に関しては、PAEHは強い日光照射により発症すると考えられ、後天性のEHを来す疾患のうちでも、独立した位置が与えられるべきと考える。
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