新生仔ラット表皮に存在するリン酸化シスタチンαが皮膚の生体防御機能を有している可能性があることから、ヒト表皮に由来する同じシステインプロテアーゼインヒビター、シスタチンAの機能について検討するため皮膚疾患における局在の変化を免疫組織学的な方法を用いて調べた。黄色ブドウ球菌の異常な増殖が認められるアトピー性皮膚炎皮疹部においては抗シスタチンA抗体の反応性の低下が認められ、ELISAによる患者皮疹部角層中のシスタチンA量も正常角層にくらべて低下していた。またアトピー性皮膚炎以外にも細菌やウイルスが関連する疾患での抗シスタチンA抗体の反応性について検討している。さらにシスタチンA以外にも防御機能関連タンパクと考えられるエンドトキシン結合性タンパク、ヒトbactericidal permeability increasing protein、Lactoferricin Bタンパク分子中のペプチドを合成してそれぞれに対する抗体を作製しin vivoでの局在を検討したところ、エンドトキシン結合性タンパクは非角化内毛根鞘細胞質、bactericidal permeability increasing proteinおよびLactoferricin Bは角層細胞膜に陽性所見が認められた。さらにイムノブロット法によって抗エンドトキシン結合性タンパク抗体は毛嚢抽出液中の14kDaタンパクと、抗bactericidal permeability increasing protein抗体は55kDaタンパクと、抗Lactoferricin B抗体は40kDaタンパクと反応しそれぞれのタンパクもしくは類似タンパクが皮膚中に存在することが明らかになった。以上のようにシスタチンAほか種々の皮膚の生体防御機能に関連すると考えられるタンパクが認められたことから、これらのタンパクが細菌やウイルスの増殖抑制にどのようにどのようにかかわっているかをさらに検討する。
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