研究概要 |
潰瘍性大腸炎とクローン病は異なった2つの疾患であり,その病態や病理組織学的背景の違いが明らかになっている。すなわち,潰瘍性大腸炎では,腸管局所に浸潤する炎症細胞が主として好中球であるのに対して,クローン病では主としてリンパ球,マクロファージである。好中球とリンパ球を選択的にRI画像として描出できるならば,前述した潰瘍性大腸炎とクローン病の違いを反映した結果が得られることが予想される。一方,従来の白血球シンチグラフィーは,主に好中球を標識していた。本研究は,標識する段階で好中球とリンパ球を完全に分離することにより,新しい選択的白血球シンチグラフィー(「好中球イメージング」と「リンパ球イメージング」)を開発するとともに,潰瘍性大腸炎とクローン病においてこれらを臨床応用することを目的としている。そこで本研究を開始するに当たり,まず白血球を好中球とリンパ球に完全に分離することが要求される。我々は,モノポリ分離溶液を用い1600rpmで25分間遠心することによって,99%純粋な好中球と99%純粋なリンパ球を分離する方法の確立に成功した。次に,この好中球とリンパ球の標識に関してはTechnetium-99m-HMPAOを用いることによって,好中球では最終的に83〜85%程度の,また、リンパ球に対しても28〜30%程度の標識率を安定して得られることに成功した。標識白血球の生存率をtrypan blue染色で検討した結果でも,ほぼ100%に近い生存能を認めた。これらの基礎的データを基に,今後は腸炎ラットと用いた動物実験,潰瘍性大腸炎およびクローン病患者への臨床応用へと発展させる予定である。
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