研究概要 |
血管造影で椎骨・脳底動脈解離と診断できた症例を32例集積でき,臨床所見,血管造影所見,MRI所見を解析した. 血管造影における診断根拠は,double lumen 11例(13本),pearl & string sign 21例(29本)であった.発症後1週以内あるいは発症後3週以降の血管造影では所見の明らかでない症例がみられた.臨床的に脳幹部や小脳の虚血に起因する症状の出現頻度が高く,くも膜下出血は3例にみられたのみである.なかには頭痛のみの軽症例や全く症状のない症例があった.従来特徴的と言われていた頭痛の発生頻度は53%と低く,発症様式や臨床経過も様々であったが,保存的治療のみで比較的良好な予後が得られた.MRのT1強調像における動脈壁内の高信号(intramural hematoma)の出現率は約34%であり,発症後1週目から3カ月の間に観察され,多くは経過観察で高信号が消失あるいは縮小した.造影後の3-D SPGR法におけるdouble lumenの出現率は88%であり,比較的長期間観察できた. 従って,椎骨・脳底動脈解離のMR所見として強調されていたT1強調像における動脈壁内の高信号所見はスクリーニング法としては不十分である.診断には,3-D SPGR法と血管造影を組み合わせる必要がある.
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