ラット肝に10Gy以上の線量で一回照射を行うと、線量依存性に照射された肝の体積の減少が起こり、その時期は照射から30日を過ぎて以降であった。この体積減少の主な要因としては、血管内皮の障害を起因とした局所への炎症細胞の浸潤とそれに引き続く膠原繊維の増生から微小循環系の障害を介する機構が考えられている。肝細胞、および非実質細胞の傷害度を包括した部分肝機能の評価方法を用いてX線と陽子線の効果の差を検討する実験手法を開発する必要性があり、現在検討中である。 臨床例の解析において、陽子線照射により障害される正常肝組織の線量一効果関係および障害の経時的変化を核医学的手法およびX線CTによって解析した。核医学的方法には肝細胞アシアロ糖蛋白受容体に取り込まれ、肝細胞代謝により排泄される99mTc-GSAを用いた部分肝機能評価を用いた。これまでの報告により、正常肝組織の耐容線量は約30Gy/15分割とされていた。陽子線24Gy/8分割の照射領域は照射終了直後に99mTc-GSAの取り込みが落ちていたが、約3カ月後には機能の回復傾向を示し、6カ月後のCTでは繊維化や萎縮の所見も現れなかった。しかし、それ以上の線量の領域では99mTc-GSAの取り込み低下は不変であり、経時的に肝萎縮も進行した。動態解析として部分肝摂取率を求め、照射前後で比較したところ線量依存性に摂取率低下を来す傾向を認めた。症例数はまだ少ないが、この手法を用いて正常肝組織の部分的な機能を評価できると期待される。
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