研究概要 |
腫瘍に対する放射線および抗癌剤の感受性を左右する因子として,最近,アポトーシスによる細胞死が重要であることが判明し,治療にたいする感受性もアポトーシスが深く関与していることが証明されてきている.腫瘍の放射線に対する感受性とアポトーシスの誘導との関係および新抗癌剤であるタキソ-ルに対する感受性とアポトーシスの誘導との関係について,ヌードマウスに移植されたヒト腫瘍を用いた実験を計画しているが,その予備実験として当科で樹立し系代しているラットのヨ-クサック腫瘍由来の細胞,NMT-1とこの細胞を繰りかえし照射することで,放射線抵抗性を獲得したNMT-1R細胞を用い,腫瘍の放射線およびタキソ-ルに対する感受性とアポトーシス細胞の出現との関係を調べた.この両者についての放射線照射によるアポトーシス細胞の出現は,すでに報告されており,NMT-1細胞で明らかにアポトーシス細胞の出現が認められている.タキソ-ルに対する両細胞の感受性は,DOが4.7nMと同程度であり,照射にたいする感受性と異なった結果をしめした.タキソ-ル投与後24時間後のDNA断片化率もNMT-1で12.4%,NMT-1Rで13.0%とほぼ同程度であり,ゲル電気泳動法でラダーパターンが認められた.ヘキストによるクロマチン染色でも核内クロマチンの凝集,断片化のみられる細胞が出現しており,アポトーシス細胞の出現と考えられた.以上から両細胞のタキソ-ル感受性が同程度であるのは,アポトーシス細胞の出現が同程度にみられることと関係していた.現在,二種類のヒト肺癌細胞株,こう芽細胞腫株を用い,照射およびタキソ-ルに対する感受性とアポトーシス細胞の出現との関係を調べており,同時にp53,waf-1,bcl-2タンパクの発現を調べているところである.今後は,この結果から細胞をヌードマウスに移植し,in vivoの実験を施行する予定である.
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