我々は大量放射性ヨード治療における放射線組織傷害性を検討するために、患者の血液のリンパ球について小核試験を用いて試みた。材料及び方法は、主にFenech&Morleyの方法に準じて行った。甲状腺癌術後患者(25名)で放射性ヨード治療(100mCi)前、一週間後に患者より採血した血液をリンパ球分離溶液であるLymp Sep 5mlあたり5mlの血液となるように調整し1700回転30分遠心しリンパ球層を分離しリンパ球を得た。分離したリンパ球を3回PBSを用いて洗浄しRPMI medium上で調整した。培養液あたり最終的に5μg/mlとなるように分裂刺激剤であるPHAを投与した。培養44時間後には分裂阻止剤であるCytochalasin Bを投与した。全培養は72時間にて終了した。終了後遠心分離しリンパ球を求め、林らが考案した方法であるAcridine orangeを、生細胞としてのリンパ球に投与して、スライドグラス上で蛍光顕微鏡にて肉眼的観察をし検討した。観察は二核細胞500個当たりの小核細胞の出現数として算出した。治療3ヶ月以上経過した患者3名から採血し、リンパ球にin vitroで0.25-1GyのX線外部照射を行い同様な小核試験を施行した。結果は、患者25名ではヨード治療前の小核細胞数は5.4±1.4(平均値±標準偏差)で、ヨード治療後の小核細胞数は15.7±2.7である。治療前後ではその細胞数に有意の増加を認めたが、その変化は軽度と考えられた。上記外部照射から得られた標準直線から求めたヨード治療によるリンパ球に対する内部照射量は0.33±0.09Gyと推定された。結論は、大量放射性ヨード治療における放射線組織障害性は認められるものの軽度であり、短期的な障害の観点からみて、大量放射性ヨード治療の安全性は確保されると推測される。
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