研究概要 |
学習障害モデルの1つとされる前脳基底核(nucleus basalis magnocellularis,NBM)破壊モデルラットに対する迷走神経節の自家移植を行い,種々のオートラジオグラフィ法を用いてアセチルコリン(acetylcholine,ACh)系の機能回復について評価するとともに,神経移植の核医学的評価の可能性について検討した.NBM破壊群,移植群,偽手術群の3群において1週間,2週間,4週間後の経時的に連続切片を作製し,イメージングプレートを用いたオートラジオグラフィによる評価を行った.AChトランスポータ分布としてシナプス小胞トランスポータのリガンドである3H-ベサミコール([3H]vesamicol)を用いて画像化を行った.これらの画像について関心領域における平均黒化度を算出し,患側/健側比による半定量的評価を行った.NBM破壊群では皮質における患側/健側比で,1週間0.82±0.14,2週間0.80±0.17,4週間0.82±0.13と患側において有意に健側に比しての低下を認めた(P<0.01).移植群では,1週間0.87±0.15,2週間0.87±0.16,4週間0.90±0.12と経時的に患側/健側比の増加が認められ4週間において有意に破壊群と比しての改善を認めた(p<0.05).以上よりベサミコールを123Iなどの放射性薬剤で標識しエミッションコンピュータ断層撮影法(emission computed tomography)を用いることによりアルツハイマー病における神経移植あるいは薬物治療の評価への応用が期待される.
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