研究概要 |
肝臓のMRI診断において肝特異性造影剤の使用は腫瘤性病変の検出能を向上させることが報告されている。当該研究では、肝臓の網内系細胞(クッパー細胞)に集積するマグネタイト粒子による造影MRIの描出能を、ラットの実験モデルおよび肝機能障害患者において検討した。この結果、肝特異性造影剤を用いた通常の造影MRIでは、肝硬変症などの肝機能障害時に肝臓への取込みが不均一になったり、再生結節や門脈周囲の炎症細胞浸潤等の影響をうけて、画像上擬陽性または擬陰性を呈することがあることを問題提起した(第56回日本医学放射線学会,1st MR Contrast Media Forum:1997年)。また肝細胞癌等に対する塞栓療法後の経過観察においても、腫瘍内の活性部位と腫瘍内壊死・嚢胞成分等が鑑別不能であり、腫瘍再発等の診断が困難な場合があることを警告した。これらの質的診断における問題点は、肝特異性造影剤使用の際の血流情報の欠除によるものと考察し、肝血流および腫瘍血流を肝特異性造影剤を用いて画像的に解析することを検討した(perfusion study)。造影剤を急速投与し、各種の撮影条件によるダイナミック撮影(perfusion study)をラットの実験モデルを用いて実施し、至適撮影方法を設定した。得られた至適撮影条件を肝細胞癌・転移性肝腫瘍等の臨床例に応用し、腫瘍血流を介して肝腫瘍活動性を評価することか可能であった。以上の結果を踏まえて、肝網内系特異性造影剤を用いた腹部造影MRIが存在診断の際に注意を要することと、ダイナミック撮影を工夫することで血流情報が得られ、不十分と考えられた質的診断にも寄与し得るとの成果を1st MR Contrast Media Forumおよび国際造影剤学会(CMR 97:1997年)で発表した。
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