目的: 閉塞性動脈硬化症に対するバルーン拡張術、ステント、およびステントグラフトによる血管内治療後に問題となる再狭窄の発生要因およびその予防法を検討する。 方法: 体重約3kgの日本白色種ウサギならびに遺伝性高脂血症ウサギを実験に使用した。静脈麻酔下に頚動脈を切開し、下行大動脈にカテーテルを挿入、血管撮影を行った後、直径0.2mm〜0.3mmのステンレスワイヤー(SUS304)で作成した、長さ1cm〜1.5cmのGianturco型メタリックステント(Zステント)を下行大動脈に挿入留置した。ステントの直径は留置する大動脈径の約1.2倍とした。ステント留置後に、一部のウサギには組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)を静脈内投与した。ステント留置から経時的に血管撮影を行い、ステント留置部の血管狭窄の有無を観察した。また、動脈壁とステント表面の粥状硬化、血栓形成、内膜肥厚などの状態を観察し、組織学的検討を行った。一方、Zステントをpolytetrafluoroethylene(e-PTFE)膜でカバーしたステントグラフト(膜張りステント)をウサギの下大静脈に留置し、血管造影像および組織像の変化を検討した。 結果: 大動脈のステント留置部には、ステントのワイヤーと血管壁の接触部に軽度の内膜肥厚が認められた。内膜肥厚は特に高脂血症ウサギで著明であった。これらの変化は、t-PA投与群では有意に少なく、薬剤投与が再狭窄の予防に有効である可能性が示唆された。一方、大静脈のステントグラフト留置部では、ステントの両端部に内膜肥厚を生じ、軽度の内腔の狭小化が認められた。
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