研究概要 |
放射線照射後マウス肺内におけるニトロキシドラジカル還元能の変化をL-バンド電子スピン共鳴(以下ESR)装置を用いて観測し,放射線肺傷害との関連性から検討を加えた.またラジカルスカベンジャーの還元能への影響についても検討した.ニトロキシドラジカルとしてはhydroxy-2,2,6,6-tetrametyl-piperidine-N-oxyl(以下hydroxy-TEMPO)を用いた.マウスを屠殺後,hydroxy-TEMPOを肺内に注入し,L-バンドESRを用いてスペクトルを経時的に観測した.観測は非照射群と2Gyまたは10Gyを胸郭のみに照射した群で経時・経日的に行った.またアスコルビン酸などのラジカルスカベンジャー投与群も照射直後に観測し,非投与照射群と比較した.マウス肺内におけるhydroxy-TEMPOの還元能は照射後一時的な低下の後いったん回復,10Gy照射群はその後再び徐々に低下し続けるが,2Gy照射群は同様に再び徐々に低下するも照射2週間後以降は再度回復傾向を示した.これらのことから以下1,2)が推測される. 1)照射直後にはマウス肺内に大量に生じたフリーラジカルの消去に還元系が消費されるため,外因性hydroxy-TEMPOの還元には照射後一時的な還元系が不十分な状態になる. 2)10Gy照射群では肺胞上皮細胞が照射にり不可逆な変性を来すが,2Gy照射群では肺胞上皮細胞の照射による障害が可逆的であったために還元系も最終的に回復した. またラジカルスカベンジャー投与群に関しては,アスコルビン酸投与照射群に非投与照射群と比べ還元能低下の抑制が認められた.すなわち,アスコルビン酸が放射線肺障害の予防,軽減に役立つという可能性が示唆された.
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