研究概要 |
本研究出は、マスウ腫瘍を用いた腫瘍増殖能に関する基礎的研究を行うとともに、腫瘍の増殖に関係する細胞周期関連遺伝子の発現から最適な放射線分割法を選択できるのではないかという仮説を立て、臨床生検組織の細胞周期関連遺伝子の発現と臨床データの関連を検討した。 1)腫瘍増殖能の照射による変化をマウスSCCVII腫瘍とEMT6腫瘍を用いて検討した。その結果、照射により引き起こされる腫瘍再増殖において、休止期細胞分画(Q細胞)の増殖期への移行(再分布現象)が重要であることが示唆された。 2)マウス乳癌腫瘍を用いて、放射線分割照射におよぼす血管新生阻害剤の効果をTG(tumor growth)time assayとTCD-50assayで検討した。その結果、血管新生阻害剤が分割照射中の再酸素化現象を阻害し、むしろ照射効果を減弱させた。再酸素化現象における血管新生の果たす役割が大きいことが本研究により明らかにされた。 3)根治照射を行った食道癌、喉頭癌、子宮頚癌の局所制御、急性および晩期障害の照射時間による影響を検討した。多変量解析の結果、照射期間が有意な予後因子であることが明らかにされた。従って、照射期間は正常組織と患者の許容範囲内で出来る限り短縮するべきである。食道癌、喉頭癌では、66-70Gyを6週間で照射するのが最も適切と考えられた。 4)食道癌生検組織を用いて、細胞周期関連抗原PCNA、Ki-67を免疫組織染色し、局所制御率、生存率との関連を検討した。本研究によって、腫瘍の細胞周期関連抗原の発現(PCNA,Ki-67)が放射線治療での局所制御率に影響を与えることが示された。この結果、腫瘍中にQ細胞が高いと照射効果が悪くなることを示唆している。これらの放射線抵抗性の腫瘍に対して、加速多分割照射が有効であり、腫瘍の細胞周期関連抗原の発現が照射法選択の指標となる可能性が示された。
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