研究概要 |
最近急増する子宮内膜症を対象に,腹腔鏡にMRIを加えることが,総医療コストにどの様な影響があるかについて検討した.調査対象を、臨床的に子宮内膜症を疑い,腹腔鏡で確定診断のついた35症例とした.うち26例は内膜症の存在が確認され,10例は内膜症が否定された.全例腹腔鏡前にMRIと血清CA-125を施行しており、355例中29例が診断できている.誤診した7例は何れも軽度の子宮内膜症であった.このため腹腔鏡だけで診断しても,MRIと血清CA-125測定を行った後に,選ばれた症例についてだけ腹腔鏡を行っても,ほぼ同等の診断結果が得られるため,費用最小化分析を行った.腹腔鏡だけで診断する場合をモデル1,MRIと血清CA-125測定を加える場合をモデル2として,総費用を計算した.腹腔鏡費用29,000円,麻酔費用85,710円,入院料42,150円,MRIは26,000円,血清CA-125測定は4,500円とした.また手術を必要とした2例については,手術料488,610円,入院費179,400円で計算した.モデル1では腹腔鏡35例の費用5,491,000円に,手術料1,336,020円を加えた総計6,826,120円必要とした.モデル2では,MRIと血清CA-125測定に955,000円,24例の腹腔鏡に3,764,640円,手術料に1,336,020円で,総計6,055,660円必要とした.MRIを加えたモデル2では,MRIを行わないモデル1に比べて770,460円,患者一人当たり22,013円医療費を節減することができた.MRIの様な高額医療機器は,ともすれば医療費の高騰を招くとされる.しかし高い診断能を有効に用いることによって,むしろ医療費の削減に役立つ事が分かった.今回は限られた疾患について,費用最小化分析だけを行った.次年度は対象疾患を広げ,又費用便益分析,費用効用分析を行い,より精度の高い普遍的な医療経済学的分析を行う予定にしている.
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