研究概要 |
婦人科疾患のうち,良性疾患として子宮内膜症,悪性疾患として卵巣癌を対照に,最初の診断にMRIを加えることが,総医療コストにどの様な影響があるかについて検討した。またスクリーニング検査の2次検診として,費用効用分析を行い,医療経済学的にMRIが有用かどうかを検討した。 CA-125は卵巣癌の腫瘍マーカーとして役立つことが知られている。しかし良性疾患の中でも頻度の高い子宮内膜症でも高率に上昇する。そこでCA-125が上昇している患者を対象とし,MRIを行った後に腹腔鏡或いは開腹術で病理学的に確定診断ができた105例を検討対象とした。MRIでは105例中87例が正診できた。正診できなかった中の14例は軽度の子宮内膜症であり,2例は卵管留水腫で,卵巣癌は2例を誤診した。総費用を計算したところMRIを行わない場合は医療費の総額は20,478,360円であった。一方最初にMRIを行うことによって不要な手術が回避できたため,MRI検査料を加えても総計18,166,980円で,計2,311,380円医療費を節減することができた。この場合,2例の卵巣癌患者を内膜症と誤診したが,これは超音波検査では正診することができ,医療レベルの低下とはならなかった。 次にこの患者群を対象に,医療便益分析として,Quality Adjusted Life Ezpectancy Years(QALYs)を求め,比較した。MRIを用いた場合のQALYsは,用いない場合に比べて,0.15増加した。今回は1QALY当たりの費用についての検討を行わなかったため,他の検査との比較はできないが,卵巣疾患に対するMRIの利用は,医療経済学的に見て,正当化される検査であることが明らかとなった。
|