研究概要 |
KIN806の放射線増感効果及び肺転移抑制作用を検討した。材料はC3H/HeマウスとSCCVII腫瘍を用いた。全体をコントロール群,30Gy照射群,40Gy照射群,KIN806(0.2mg/g)群,30Gy+KIN806(0.2mg/g)群,40Gy+KIN806(0.2mg/g)群,KIN806(0.4mg/g)群,30Gy+KIN806(0.4mg/g)群,40Gy+KIN806(0.4mg/g)群の9群に分類した。マウスに腫瘍細胞を10^5個移植後,17日目に放射線照射を施行した。放射線は30Gy-40Gy照射した。KIN806は照射30分前に0.2mg/g-0.4mg/gを投与した。肺転移結節数は照射後3週間目に肺表面の転移結節数をカウントした。腫瘍の大きさは治療開始時の腫瘍の体積を1とした相対比で表し,3週間目ではコントロール群24.1,KIN806(0.2mg/g)群16.6,KIN806(0.4mg/g)群13.6とKIN806単独でも腫瘍の成長は抑制された。放射線の照射にKIN806を併用するといずれも著名な腫瘍の縮小効果が得られ,腫瘍の成長抑制はKIN806の投与量に依存した。3週間目の平均肺転移結節数はコントロール群は8.57,KIN806(0.2mg/g)群4.42,KIN806(0.4mg/g)群2.71とKIN806単独でも転移は抑制され,また30Gy群4.44,40Gy群3.00と照射線量の多い方が若干,転移は抑制された。転移抑制効果はKIN806の投与量に依存した。放射線にKIN806を併用すると転移は放射線単独と比較して著明に減少した。転移抑制効果は線量には依存せず,KIN806の投与量に依存した。次にKIN806とKIN806類似放射線増感剤KIN804及びKIN844との比較試験を行った。上記と同様の方法にて照射の30分前にKIN806,KIN804およびKIN844 0.mg/gをそれぞれ投与した。放射線増感剤併用群では照射単独群と比較して腫瘍の成長は抑制され,増感剤相互の比較ではKIN806とKIN804とはほぼ同等の増感効果を示したが,KIN844の増感効果は劣った。肺転移結節数は放射線治療の有無に関わらずKIN806投与群のみに著明な転移抑制効果がみられ,KIN804とKIN844には転移抑制効果はみられなかった。増感剤の投与回数(1,3,6回)の違いによる腫瘍成長抑制効果と転移抑制作用とには差が見られなかった。
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