研究概要 |
KIN806のN-hydroxyethyl誘導体であるKIN896の抗腫瘍活性をKIN806と比較するとともに、腫瘍局所に惹起される免疫反応については前年に報告したKIN804(804群),KIN844(844群)を含めて検討した。材料はC3H/HeマウスとSCCVII腫瘍とを用いた。実験に際しては(1)コントロール群(C群),(2)30Gy照射群(R群),(3)KIN806投与群(806群),(4)KIN896投与群(896群),(5)KIN806投与+30Gy照射群(806+R群),(6)KIN896投与+30Gy照射群(896+R群)の6群を比較検討した。マウスに10^<51>個の腫瘍細胞を移植後17日目に^<60>Coγ線30Gyを照射した。放射線増感剤を併用する群では照射の30分前にKIN806,KIN896 0.4mg/gを腹腔内投与した。治療後20日目にはすべてのマウスを屠殺して腫瘍組織と肺とを摘出し、肺表面の転移結節数を計測した。摘出した組織はただちに液体窒素中にて保存し、後日、ABC免疫染色を行った。腫瘍体積(照射時1.00)は照射後19日目ではC群 18.76,806群 18.96,896群 11.66と806群はC群と同等であったのに対して、896群ではC群よりも腫瘍の成長は抑制された。同じくR群3.41,806+R群 0.19,896+R群 0.17と放射線増感剤併用群では明らかに照射単独群と比較して腫瘍の成長は抑制された。KIN806とKIN896とではほぼ同等の増感効果を示した。肺転移結節数はC群9.78,806群 4.33,896群 2.43と896群は806群と同等以上の著明な転移抑制効果がみられた。腫瘍組織内浸潤単核球はC群、804群、844群、804+R群、844+R群ではHelper Tリンパ球の浸潤はみられなかったが、806群、896群、806+R群、896+R群では軽度(+)から中等度(++)のHelper Tリンパ球の浸潤がみられた。放射線の照射の有無に関わらずKIN806とKIN896投与群のみに中等度(++)から高度(+++)のMacrophageの浸潤がみられた。肺転移抑制効果の見られたKIN806とKIN896投与群にHelper Tリンパ球とMacrophageの浸潤がみられたことから、これらの増感剤は免疫賦活作用を有していることを強く示唆した。
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