1.早期指標としてのDNA合成促進のフローサイトメトリー法による測定 DNA合成をフローサイトメトリー法で測定を行った。腎組織を機械的に分散した後、トリプシン処理により細胞を完全に分離して、フローサイトメトリー用試料を作成した。細胞の分離はほぼ良好であった。しかし、照射一週間後の試料ではDNA合成促進の兆候はみられず、早期指標として有望ではないようであった。 2.遺伝子発現法の開発 腎放射線晩発障害の早期指標としてのDNA合成促進をさらにそれに先立つc-myc、c-H-ras、c-K-rasなどの増殖関連遺伝子の発現として捉えうるか否かを検討した。マウスの左腎に9、12、および15Gyの一回照射をそれぞれ10匹ずつ行い、照射24時間後に摘出した腎からRNAを抽出して、非照射の右腎を対照としてc-mycのmRNAレベルでの発現を解析した。 非照射マウスでは10個体中1個体に、9Gy照射マウスでは10個体中1個体に、12Gy照射マウスでは10個体中6個体に、また15Gy照射マウスでは10個体中9個体に左腎(照射腎)におけるc-mycのmRNAの発現増加がみられた。この線量と発現率との関係は以前に観察した12ヶ月後の腎重量の減少とよい相関がみられた。 この遺伝子発現法は生検標本で検索可能で、また照射24時間後の超早期に発現しており、腎晩発障害の早期指標として臨床応用が有望である。腎重量の観察との比較でも、c-mycのmRNA発現頻度の増加は腎重量の減少に一致してみられており、腎晩発障害の超早期予知法としての期待が高まる。今後はc-mycの発現した固体がのちに腎晩発障害をきたすことを確認する実験を計画している。またc-myc以外の増殖関連遺伝子についてもそれらの発現を検討し、より感度と特異性の高い早期指標の開発を目指している。
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