昨年度に引き続き、人工内耳埋込み患者を対象に音刺激前後の脳血流SPECTを行い、聴覚認知の機序解明、人工内耳の客観的評価法の確立を目的とした.人工内耳埋込み後、音刺激下で脳血流SPECTを施行し、脳血流の増加する部位、範囲と程度を観察した. 脳血流SPECTは、3検出器型SPECT装置PRISM3000と核医学データ処理装置ODYSSEYを使用した.対象となる人工内耳患者は、本人の同意を得た.まず人工内耳の電源を切った状態(無音)で、Tc-99mで標識したニ-ロライト(Tc-99m-ECD)370MBqを静注し20分間SPECTデータの収集を行い、引き続き人工内耳の電源を入れるとともに音を聞かせた状態で、倍量のTc-99m-ECDを追加静注しSPECTデータの収集を行った.画像減算法により音刺激化の脳血流画像を再構成し、無音状態と音刺激化の局所脳血流分布の変化を見た.その再構成SPECT画像を8年度購入のパーソナルコンピュータに転送し、大脳内局所の脳血流分布の変化を定量的に評価した. 前年からの合計で9例に施行し、賦活部位、範囲、程度の解析を行い、側頭葉から上側頭回にかけての聴覚領の血流増加が確認できた.人工内耳を介した音刺激による聴覚領の賦活がSPECTによって検出できることが証明された. 脳血流SPECTが人工内耳の客観的評価法の一つとして有用であることが示唆され、今後、経過観察等データの蓄積によるさらなる研究が期待された.
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