研究概要 |
これまで、放射線損傷の修復に高浸透圧食塩水やヨード系造影剤がどのような影響をもたらすかを染色体分析を用いて調べてきた。 染色体分析において指標とした染色体異常は2動原体染色体と環状染色体であった。γ線照射後15分以内に高張食塩水や造影剤を添加、処理することにより放射線誘発染色体異常頻度が無添加の場合よりも高まったが、60分後の処理では殆ど高まらないことが判明した。この原因は、DNAに生じた損傷は高浸透圧下では修復しにくいこと、60分後では修復しうる損傷はすでに修復しきっていることのためと考えられた。 Confluentな状態のHeLa cellsを用い、10%FCSを含むα-MEM培地中にlopamidol(lopamiron300;350mOsm/kgH20)またはloversol(Optiray 320;350mOsm/kg H2O)を加え、37℃、10,20,30,40,50分間incubate後total cell lysateを調整し、抗SAPK/JNK抗体またはリン酸化特異的抗SAPK/JNK抗体を使用してWestern blottingを行った。その結果、control(600mM sorbitol;37℃50分処理)ではSAPK/JNKのリン酸化が検出されたのに対し、2種類の造影剤とも上記の各条件下では有意なリン酸化は検出できなかった。また、上記の造影剤を投与した直後に137Cs-γ線10Gyを照射し、同様の実験を行った場合でも、γ線による蛋白発現増加が知られているGADD45の増加は認められたものの、SAPK/JNKのリン酸化は痕跡程度にしか検出できなかった。
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