研究概要 |
本研究の目的は,胸部集団検診における肺癌の診断精度を改善させるために,結節状陰影の検出を中心とした胸部集団検診用コンピュータ支援システムの開発を行うことである.コンピュータ支援診断とは,コンピュータによる画像処理および分析結果を,医師が"第2の意見"として参考にしながら画像診断をする手法である.2年間の研究期間のうち平成8年度は以下に述べるように,胸部集団検診において撮影された画像のデータベースの構築と,結節状陰影を効果的に検出するアルゴリズムの開発を主に行った. 1.画像データベースの構築. 岩手県立中央病院および岩手県予防医学会協会の協力により,平成8年度に実施された肺癌集団検診画像6915枚,定期健康診断画像1359枚,合計8274枚の胸部正面画像を収集した.このうち,要精検は67症例(0.97%)で,最終診断結果を現在追跡確認中である.すべての胸部画像は車載型FCR(Fuji Computed Radiography)装置にて撮像し,1/10に圧縮して光磁気ディスクに記録した.平成9年度も同一地区でFCR集団検診が実施予定であり,同じ患者の2年連続したデジタル胸部画像から成るデータベースが完成される.これらの連続画像を使って,平成9年度の本研究では,経時的差分画像法をコンピュータ支援診断システムに追加すべくシステムの改良および開発にも取り組む予定である. 2 結節状陰影検出アルゴリズムの開発 既に開発していたデジタル胸部画像に対する結節状陰影の検出法に対して次のような改良を行った. (1)従来は直径9mmの腫瘤影を最も強く協調するフィルターを使用していたが,今回は直径が5〜20mmの範囲にある腫瘤影を協調できるようにフィルターを改良した.その結果,既存のデータベースに対して,真陽性率が74%から88%へと改善された. (2)コンピュータによって検出された候補陰影の特徴量(サイズ,コントラスト,円形度,不整度,濃度勾配情報などを入力としたニューラルネットワークを併用することにより,コンピュータだけによる結節状陰影の検出は,真陽性率79%,平均偽陽性率1.7個/画像と大幅に最終検出精度が改善された.
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