研究概要 |
本研究の目的は,胸部集団検診における肺癌の診断精度を改善させるために,結節状陰影の検出を主な対象にした胸部集団検診用コンピュータ支援診断のためのハードおよびソフトウエアーシステムを開発することである.昨年度は画像データベースの構築ならびに結節状陰影検出アルゴリズムの開発を行った.今年度は次に述べるように,画像データベースを用いて主に検出アルゴリズムの改良と経時的差分法の基礎的研究を行った. 1 結節状陰影検出アルゴリズムの改良 (1) フィルムデジタイザー,ワークステーション,レーザープリンターおよびビデオプリンターからなる集団検診用胸部コンピュータ支援診断のためのハードウエアーシステムを構成した. (2) 結節状陰影のコントラストを強調するマッチドフィルターの最適化を行った.その結果,周波数帯域0.05〜0.15cycles/mmを3個のフィルターで分担して強調する方法を採用し,1個のフィルターに比べて初期検出感度が0.82から0.96へと大きく改善された. (3) 結節状陰影の最終判定において,ルールベース法の判定基準を厳しくして,明らかなケースのみをルールベース法で判断させ,残りの困難なケースのみをニューラルネットワークを用いて判断させた.その結果,ニューラルネットワークの分類能が改善され,最終的な真陽性率は約80%,平均偽陽性率1.7個/画像と改善された. (4) 実用化のためには,後部及び前部肋骨の交差による偽陽性を減少させる必要があることが示唆された. 2 経時的差分画像処理法の基礎的研究 (1) 胸部集団検診で撮影された過去および現在画像間の差分画像を作り,病巣の経時的変化を強調する手法を開発した.本手法には画像の平行移動,回転および形状局所変形技術を含んでいる. (2) 本手法を昨年構築した画像データベースの200症例に適用したところ,約70%でアーチファクトの少ない経時的差分画像が得られた. (3) 局所変形技術の改善によるアーチファクトの減少は理論的見通しが立ち,経時的差分画像は胸部集団検診の診断精度を大幅に改善させる可能性があることが示唆された.
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