研究概要 |
目的とする遺伝子を必要な時、必要な場所で特異的に発現させる為に外部からの遺伝子発現調節機構の確立を図り、悪性腫瘍の遺伝子治療への応用の可能性について検討した。この目的に利用したEGR1遺伝子は放射線等の細胞傷害性の刺激に応答する一連の遺伝子群でも極めて早期に反応してくる遺伝子の一つである。しかし、外部からの放射線照射では悪性腫瘍への応用を想定した場合、微細転移巣への特異的な照射は困難が予想される。この場合に腫瘍集束性のある放射性同位元素が利用できれば臨床応用に一歩近付けると考えられる。そこでまず、EGR1遺伝子の放射性同位元素によるプロモーター機能の亢進の現象論的把握と確認の為にEGR1プロモーターの下流にβガラクトシダーゼおよびluciferase遺伝子を結合したプラスミドを作成した。これにより、放射性同位元素ガリュウムやテクネチュウムの添加でこれらのはレポーター遺伝子を一過性に活性化可能であることを証明した。次いで、標的細胞としてのヒト悪性腫瘍細胞内での作動性をまず培養細胞で確認した。ヌードマウスにヒト膵臓癌細胞を移植し、レポーター遺伝子を結合したEGR1遺伝子を種々の方法で投与して腫瘍細胞への集積と放射線同位元素による発現誘導を検討した。その結果一群5から10個体での3回の実験で平均80%以上の効率で遺伝子発現が可能である結果を得た。さらには、殺戮遺伝子(Herpes thymidine kinase,TNF等)を導入して遺伝子発現誘導を試み、腫瘍細胞の増殖変化、正常細胞に対する影響等を観察する。
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