研究概要 |
上腹部のEPI拡散強調画像から拡散係数(ADC)を算出し臨床応用の可能性について検討した。 GE社製Signa Horizon Ver.5.5を用い,使用コイルは,body coil及びTorso coilを用いた。TR:4000msec,TE:70msec,matrix:128×128,スライス厚:8mm,ギャップ:2mm,撮像時間4secで10-15スライスを呼吸停止下に撮像した。x軸方向にb-factorを3.9,55,251s/mm^2の3種類に変化させ,SE型single-shotEPIにより拡散強調画像を撮像した。ADCは,StatViewJ-4.5にて算出した。臨床応用の結果は,肝硬変8例の平均ADCは,1.49±0.3×10^<-3>で,正常例よりも有意に低値であった(p<0.05)。肝細胞癌22結節の平均ADCは,3.13±1.02×10^<-3>で,転移性肝癌10結節の平均ADC(2.38±0.33×10^<-3>)よりも高い傾向であったが,有意差は認めなかった(p=0.052)。また,肝癌TAE後経過良好の2結節では,0.54×10^<-3>と低値を示した。肝嚢胞2例の平均ADCは,4.25±2.47×10^<-3>と高値であった。萎縮腎3例の平均ADCは,3.77±0.68×10^<-3>で,正常例よりもやや低い傾向がみられたが有意差は認めなかった。腎癌1例のADCは,6.37×10^<-3>で,やや高値であった。腎嚢胞9個の平均ADCは,4.48±1.31×10^<-3>で有意差は認めなかった。腎硬塞の1例では,3.05×10^<-3>mm^2/secと低値であった。今回用いたb-factor:251では,組織灌流の影響を加味したADCを求めているためにADCがやや高値を示したものと考えられるが,比較的良好な画像がえられた。single-shotEPIを用いることにより上腹部臓器の拡散強調画像の撮像が可能で,腫瘍の質的診断,肝硬変などの機能評価への臨床応用が期待できる。
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