平成8年度には実験動物および屍体骨を利用した基礎的研究を実施した。 (1)実験動物を利用した研究 フェレットを実験動物モデルとして用い、免荷時の骨の変化をpQCTにより評価した。まず、専用の固定装置を作成し、測定精度を検討した。測定再現性は、大腿骨遠位部の骨密度と断面二次モーメントでそれぞれ2.0%以下と3.5%以下の誤差であった。4週間の免荷で有意な骨密度低下がみられ、その後8週間の再負荷により骨密度は部分的に回復した。断面二次モーメントの回復率は骨密度の回復率よりも良好であり、力学的負荷に応じた骨の改築を反映した現象と考えられた。 (2)屍体骨を利用した研究 解剖用献体の前腕部をpQCTにより断層撮影し、測定精度の検討を行った。骨密度の測定再現性は誤差1.0%以下、灰分量を基準とした場合の正確度は誤差7.0%以下であった。次に、pQCT画像から得た皮質厚と断面の直接計測による皮質厚の比較を行った。皮質厚2mm以下では部分容積効果などの影響で誤差が急激に増大する傾向がみられた。この結果をもとに健常成人女性の測定結果を検討したところ、加齢による皮質骨の変化は菲薄化が主で、骨密度の低下は軽微であると推測できた。橈骨遠位海綿骨領域の画像解析による指標は、加齢変化を反映するのの年齢との相関は骨密度より弱かった。構造指標としての意義や臨床的有用性については今後の検討課題と考えられた。
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