肝細胞癌の発症率が高いと言われるLong-Evans(LEC)のラットの同一個体を、MRイメージング法を用いて繰り返し観察することにより、肝細胞癌を含む肝疾患の進展過程を追跡することを目的とする。平成1α年度には、昨年度より観測を継続している長期実験群のLECラット9匹について最後の100週齢でのMRイメージング測定を行った。60〜90週齢で実施したTl、T2強調画像、Gd(DTPA)を用いる造影後Tl強調画像の測定に加え、造影剤注入後20〜300秒にわたるダイナミックスタディを実施した。この結果、癌性の疑われる2結節では造影直後のTl強調画像における造影効果の極大及びその後のすみやかな回復をもって、その他の非癌性病変との識別が可能であった。イメージ測定終了後、肝摘出を行いhematoxylin/eosin染色、peiodic-acid metheamine silver(PAM)染色により病理診断を行った。100週齢における総病変数は旬と、90週齢での27より激増した。途中死亡の3例を含めて全12匹のLUCにラットにおいてイメージング及び病理診断の両者で確認される病変として、肝細胞癌を含む新生及び異形成結節4例、肝紫斑症の例、胆管線維症7例、胆管拡張症4例、嚢胞腺腫3例を確定した。癌性病変は異形成結節を含めても4例とこれまでの報告より発症率が小さかった。対照的に、洞様血管の拡張を特徴とし、肉眼的に暗赤色の結節と認められる肝紫斑症がほとんどすべての老齢LECラットに認められ、LECラット肝に発症する新たな典型的病変と考えられた。100週齢で確定された病変を60〜90週齢における画像にさかのぼって同定し、病変の画像上の特性の経時変化の解析を行った。
|