研究概要 |
選択的注意課題遂行時に記録した脳波によりNd,NMNのscalp current density mapping(SCD)を検討した。分裂病患者及び健常者各9名を対象に,刺激は左右各耳に1KHzの純音(提示間隔600msec)で,左右いずれかの耳を注意耳側とし,高頻度刺激(提示確率80%)は持続100msec,低頻度刺激(提示確率20%)は持続50msecとした。被験者には注意耳側低頻度刺激をカウントするよう求めた。注意耳側がそれぞれ左,右である場合各3セッションを施行した。Nd,MMNはそれぞれ差波形(Nd:高頻度注意刺激-高頻度非注意刺激,MMN:低頻度非注意刺激-高頻度非注意刺激)を用いて同定し,各成分のSCDは頭皮上16部位の電位を用いてspherical spline interpolationにて補間した1079ポイントのデータより算出して,分裂病群と健常群で比較検討を行った。 MMN,Ndともに,健常群で左右耳刺激ともに2峰性を示す陰性成分が認められたのに対して,分裂病群では左耳刺激時に明瞭な陰性成分が認められず,健常群に比して振幅の減衰が認められた。Ndに比してMMNで群間差はより顕著であった。一方,SCD mappingについては,両群ともNdの前期成分は中心部,後期成分は前頭部優位の分布を示し,群による違いは明らかでなかった。MMNについては,早期(潜時約200msec)の成分が健常群では左右の側頭部に吸い込み口が認められたのに対して,分裂病群では前頭部に吸い込み口が限局し,側頭部の吸い込み口が欠如していた。まとめると,分裂病群は健常群に比して,意識的な注意機能(Nd)より自動的な注意機能(MMN)に偏位が顕著であった。分裂病群のMMNの側頭葉成分が欠如していたが,これまでの知見から,そのメカニズムについては前頭葉機能障害が関連している可能性が示唆される。
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