研究概要 |
本年度は選択的注意課題遂行時のMMN,N2bについて検討した。分裂病患者21名及び健常者19名を対象に,刺激は左右各耳に1KHzの純音(提示間隔600msec)で,左右いずれかの耳を注意耳側とし,高頻度刺激(提示確率80%)は持続100msec,低頻度刺激(提示確率20%)は持続60msecとした。被験者には注意耳側低頻度刺激をカウントするよう求めた。注意耳側がそれそれ左,右である場合各3セッションを施行した。脳波は頭皮上16部位から導出し,MMN,N2bはそれそれ差波形(MMN:非注意条件時の低頻度刺激-高頻度刺激,N2b:注意条件時の低頻度刺激-高頻度刺激)を用いて同定し,その振幅及び頭皮上分布について分裂病群と健常群で比較検討を行った。MMN,N2bともに有意に分裂病群で振幅値の低下が認められたが,頭皮上分布については有意な違いは認められなかった。一方,非注意条件において遅い潜時帯で持続性の陰性成分が認められ,健常者では刺激耳側対側優位性が認められ,N2bに関連する成分と考えられたが,患者群ではそのような分布は認められず,Naatanenら(1982)が報告した自動的な刺激検出過程と同様の成分と考えられ,精神分裂病患者は刺激検出過程で自動的処理優位である可能性が示唆された。 そのほかに,上記と同様の課題を用いて,多チャンネル脳波(128ch)を用いたMMN,Ndの検査を行い,健常者10名のSCDトポグラフィから,MMNについては左側頭部に吹き出し口と吸い込み口,右前側頭部に吸い込み口,右頭頂部に吹き出し口と吸い込み口を認めた。以上の結果から,健常者については側頭部,右前頭部のほかに,Levanenら(1996)が磁気脳波を用いて同定した右下頭頂皮質のdipoleに一致する成分が認められた。現在,分裂病患者について無視課題を用いて検査を施行中である。
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