健康女性の生体リズムが月経周期に伴って規則的に変動することが明らかになったのに対し、月経関連の睡眠障害患者の病態生理については未だに明らかでない。多くの女性が月経周期に伴って不眠や過眠の不定愁訴を呈することはよく知られているが、その詳細はまだよくわかっていないのが実情である。本研究は、これら月経関連の睡眠を中心とした不定愁訴を有する患者の睡眠感や各種生体リズムが、健康者に比較してどのように変化しているかを明らかにすることを目的として研究を行ってきている。平成8年度は月経周期に伴って生じる不眠・過眠について、つまり月経髄伴睡眠障害の実態について詳しく調査した。健康成人女性200名以上を対象として睡眠障害の実態調査を行うと同時に性格テスト(YGテスト・CMI健康調査表)を行った。その結果、健康な女性のおよそ4割が月経に髄伴して睡眠の変化を自覚していることが明らかになり、しかもそのうちの9割以上が月経前あるいは月経と共に眠気が増大するという過眠症状であることがわかった。また性格テストから、上記の訴えをする人はむしろ性格に問題のない人がほとんどであることがわかった。さらに、少数例であるが月経に関連して眠気の変化を自覚している例について、自記式の睡眠覚醒リズム表の記入と行動量測定装置を用いて、月経周期1〜3周期にわたり詳細な睡眠覚醒リズムを記録した。それにより、月経前はそれ以外の時期に比較して24時間中の睡眠の占める時間が延長することがわかった。以上のことから、ごく普通の健康な女性の多くが、月経に関連しての眠気を自覚しており、実際に睡眠時間も延長していることがわかり、今後この障害の対策を早急に検討する必要があることがわかった。
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