研究概要 |
これまでの睡眠・覚醒リズム障害の病態の解明、治療法の開発、疫学と予後の研究実績のうえに、本研究によって以下の実績成果が得られた。 1.日米共通・共同調査表(質問紙法)による睡眠・覚醒リズム障害の分析 愛知県下約174,000人を母集団とする高校生のうち、無作為抽出した52公立高校の生徒7,421人を対象に、米国のMontefiore Medical Center(New York)のグループ(代表M.J.Thorpy,M.D.)が作製した質問表をわが国用に改訂したものを用いて、睡眠相後退症候群(DSPS)に関して分析を行った。 (1)家庭の環境とくに両親と同胞の睡眠リズムのパターンと、当該高校生の相関について、DSPSの疑わしい群(DSPS群)とそうでないものの群(非DSPS群)間の差異を分析したが、母の入眠困難との相関を除いて有意な差はみられなかった。また郡部と郡市部についても同様に差はみられなかった。従ってこれまでのところ環境要因がDSPSの発症に大きく影響しているとは断定できなかった。 (2)質問の項目(全項目30、117コラム)のうち、睡眠リズム障害としてDSPSを明確にできる項目(13項目)のみを抽出して分析したところ、DSPSの疑わしい群はそのscoreが22.20±4.50となり、非DSPS群の11.43±5.04と明らかに差がみとめられた。 (3)Zungのうつ病評価尺度を用いて併行して行った調査では、うつ状態に両群間に差はなかった。 2.メラトニンを用いた治療反応効果による鑑別 メラトニンが睡眠リズム障害とくに不登校に有効との報告があるので、予備的に成人のNon-24 1例とDSPS各1例に試みたが、体温や睡眠構造の変化から、入眠が急速に促されるものは、第一義的なリズム障害である可能性が示唆された。
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