阪神大震災は神戸市をはじめとする一般住民のみならず、医療スタッフにも大きな影響を与えることとなった。神戸大学医学部附属病院においては、震災後2週間は救急外来を中心として、続々と搬送される死傷数を確認、治療する体制がとられた。しかし、一般外来棟は避難の市民と点滴等で治療される負傷者が廊下にまであふれ、さながら野戦病院の様相を呈することとなった。一方、病棟では老朽化した建物の破壊に加え、水道やガス停止、検査システムの一部破綻、救援物質による食事の配給など、未だかつて経験したことないような、病院としての機能が著しく損われた状態に陥った。医師や看護婦をはじめとする医療スタッフもまぎれもない被災者であり、また同時にcare giverとしてとりわけ震災後早朝の野戦病院と化した大学病院をはじめとする基幹病院において、献身的な治療をすすめてゆかねばならなかった。 こういった医療従事者のストレスの程度をGeneral Health Questionaire(GHQ)を用い、神戸大学病院(震度7)、西市民病院(震度7.倒壊)および西神戸医療センター(震度6)でみたところ、いずれも著しく高値を示した。GHQの総得点は糖尿病患者や摂食障害患者と比較しても高く、同時に身体的愁訴も高率に認められた。 現在、経時的なGHQの変動を検討中であるが、大震災に伴うような社会のカタストロフィーは医療従事者に大きな負担を強いることが明らかであり、今後の災害医学を考えてゆく際に、考慮されなければならないと考えられた。
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