研究概要 |
5-HTによる皮質ACh分泌の制御機構を解明する一貫として、平成8年度はACh分泌における5-HT_<1A>受容体の関与を解明していくと共に、ACh分泌における5-HT_<2A>受容体と5-HT_<1A>受容体の相互関係についても明らかにしていくことを目的とした。 あらかじめ雄性ラット前頭葉に透析プローブを留置し、二日後無麻酔・自由行動下で100nMのneostigumineを含む人工脳脊髄液を還流させ、その中に含まれるAChをHPLCECDによって測定した。 皮下投与した5-HT_<1A>受容体agonistの8-OH-DPAT(0.1mg/kg)は、ACh分泌に有意な影響を及ぼさなかった。背側縫線核に60分間投与した選択的5-HT再取込み阻害薬のfluoxetine(1μM)は、ACh基礎分泌値を有意に低下させた。一方、透析プローブを介して前頭葉へ60分間投与した100nMと10μMの8-OH-DPATは、共にACh分泌値に有意な影響を及ぼさなかった。しかし、fenfluramine(10mg/kg,s.c.)投与30分後に8-OH-DPAT(10μM,60分間)を前頭葉へ投与したところ、fenfluramineの皮質ACh分泌増加作用は著しく増強された。5-HT_<1A>受容体と5-HT_<2A>受容体の双方に親和性を持つ5-MeO-DMT(2.5mg/kg,i.p.)は、一過性にACh分泌を増加させた。 以上の結果から、5-HTは背側縫線核に存在する5-HT_<1A>自己受容体を介して皮質ACh分泌に対して抑制的に、一方前頭葉(皮質)に存在するシナプス後5-HT_<1A>受容体を介して促進的に作用することが示唆された。さらに、皮質では5-HT_<2A>受容体活動の亢進に連動し皮質5-HT_<1A>受容体機能も亢進し、その結果5-HTによる5-HT_<1A>受容体を介するACh分泌促進作用も増大する可能性が示唆された。
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