研究概要 |
申請者らは,ヒトの難治性側頭葉てんかんの実験モデルであるキンドリング現象を誘導したラットの脳内でポリアミン合成反応が活性化され,ポリアミン,特にプトレッシンが顕著に増加することを明らかにした。また,このプトレッシンがキンドリングの発達に対して抑制的に作用していることも報告している。本研究では,脳内ポリアミンの濃度調節に関与するもう一つの代謝経路であるポリアミンアセチル化反応に着目し,この代謝経路の活性とキンドリング現象の関連性について検討した。 実験にはペンチレンテトラゾール(PTZ)の反復投与(33mg/kg,i.p.)によって誘導したPTZキンドリングモデルを用いた。ポリアミンアセチル化反応の活性は,ポリアミン酸化酵素阻害剤(MDL72527;50mg/kg,i.p.)投与によるN-アセチルポリアミン類(N-アセチルスペルミジンとN-アセチルスペルミン)の蓄積を調べることにより,間接的に測定した。 PTZキンドリングを誘導したラットの大脳皮質および脳幹でN-アセチルスペルミンの明らかな増加が観察された。また,N-アセチルスペルミンジの増加は脳幹部のみで見られた。これらの結果は,キンドリングを誘導した脳内でポリアミンアセチル化反応が活性化され,特に大脳皮質でこの活性が高いことを示している。アセチル化反応は,ポリアミンが細胞外へ遊離するときの一つの手段であると考えられている。したがって,現在,脳内微小透析により細胞外のN-アセチルポリアミンおよびポリアミン濃度を測定している。また,ポリアミン酸化酵素阻害剤のキンドリング発達に対する影響も検討する予定である。これらのことより,キンドリングとポリアミンアセチル化反応の関係がさらに明らかになるものと思われる。
|