研究概要 |
ペンチレンテトラゾール(PTZ)の反復投与で誘発したキンドリングラットを用いて,ポリアミンおよびアセチルポリアミンの濃度を脳部位別に定量した。最終のPTZ投与から,8および24時間後にプトレッシンの顕著な増加が観察された。プトレッシンの増加率は脳部位によって異なっており,特に大脳皮質で顕著であった。スペルミジンとスペルミンの有意な増加は,どの脳部位でも見られなかった。これらの結果は,PTZキンドリングの形成において,大脳皮質が最も興奮性の高い部位であることを示唆している。ポリアミン酸化酵素阻害剤(MDL 72,527)を前処理したキンドリングラットの大脳皮質では,N^1-アセチルスペルミジンおよびN^1-アセチルスペルミンの増加とGABAの低下が検出された。また,MDL72,527の前処理は,キンドリングラットおよび対照群のプトレッシン濃度を低下させた。さらに,MDL72,527を投与したラットでは,けいれん閾値の低下が観察された。 以上より,PTZキンドリングの形成には,大脳皮質のくり返しの興奮とその後の可塑的機能変化が重要であると思われる。また,PTZキンドリングの誘発により,ポリアミン合成反応のみでなく,アセチル化反応も活性化されることが明らかになった。ポリアミンアセチル化反応は,プトレッシンやGABAなどの脳内抑制物質の供給に関与していると思われ,脳の興奮性を制御していると推測される。
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