身体化患者に関する臨床情報の包括的な評価尺度と質問紙を作成し、次年度の事象関連電位を用いた精神生理学的な研究の基礎資料にするために、従来の研究を参考にして以下の4部から構成される面接記録紙を試作した。すなわち第1部は基本情報(性別と年齢、初診時診断名、投薬状況、薬物による副作用など)、再2部は身体症状の病歴と現在症(系統別身体症状と精神症状の種類とその経過)、第3部は疾患行動(受診までの躊躇期、受診した診療科、診断、受診方法、身体疾患の確信度、利用した治療行為、身体疾患を憂慮する自分に関する自己評価、自己や他者の精神障害を受容できる程度など)、第4部は背景因子(文化・社会的因子、経済的因子、家族因子、住居や交際、教育、加齢、性別因子など)として自由面接法で情報を得るようにした。 身体化症状を主訴とする患者に上記の面接記録紙を適用して身体化に関連する項目を選別すると共に項目の聴取の仕方などを検討した。その結果、身体化に関連する項目として、(1)独居を含む孤独、(2)精神障害に対する偏見と受容の乏しさ、(3)身体疾患の高い家族内発生率、(4)執着性格、(5)多人数医師の受診歴、などが重要であるという結果を得ている。そこでこの結果に基づいて、平成9年度に上記4部に含まれる項目を基にして0点〜4点の5段階で評価できる尺度および質問紙を試作した後、研究協力の得られる一般診療科にこの評価尺度と質問紙を適用して身体化の実態と発現機序を明らかにする。さらに事象関連電位を測定するためにこの実験刺激系を制御するコンピュータプログラムをパーソナルコンピュータを用いて開発し、予備的な研究を上記調査と平行して実施する予定である。
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