研究課題/領域番号 |
08671100
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
精神神経科学
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山上 榮 大阪市立大学, 医学部, 教授 (20047004)
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研究分担者 |
勝元 栄一 大阪市立大学, 医学部, 助手 (90271189)
木岡 哲郎 大阪市立大学, 医学部, 講師 (40254396)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1998
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キーワード | てんかん / ELマウス / mRNA / 遺伝子発現 / 脳 / GFA / HLF / GLT |
研究概要 |
1 我々は、これまで自然発症てんかんモデルのELマウスにおいて、発作による脳のglial fibrillay acidic protein(GFAP)mRNAの転写制御にAP-1が関与している可能性を示唆してきた。本研究では、GFAPmRNAの脳の局所的な差異について調べた。痙攣履歴を持つEL[S]マウスのGFAPmRNAは、発作18時間後で、歯状回>海馬CA1-3>梨状葉>大脳皮質の順で発現した。ddYマウスにベメグリドを注射し、発作を誘発すると、これらの部位でのGFAPmRNAの発現は、極めて少なかった。したがって、これらの部位がELマウスの発作感受性に相関している可能性が示唆された。 2 てんかんの発作感受性は低酸素において増大するが、それによって誘導されるhypoxia inducible factor lα like factor(HLF) はaryl-hydrocarbon receptor nuclear transiocator (Arnt)とbasic helix-loop-felix(bHLH)per-arnt/AhR-Sim(PAS)ドメインを会してヘテロダイマーを形成し、hypoxia response element (HRE)を有するvascular endotelial growth factor(VEGF),erythropocetin(EPO)および種々の解糖系酵素の転写制御を行うといわれている。そのため、ELマウス脳におけるHLFのmRNAの発現をRNase protection assayとin situe hybridzationとで調べたところ、発作1時間後に増加し、6、48、120時間後に三相性のピークを呈した。局所的に海馬CA1-3、歯状回、梨状葉で顕著にHLFmRNAは発現し、一部大脳皮質でも発現した。発生感受性の獲得が脳の低酸素誘発遺伝子の発現に相関することを示唆している。 3 ELマウス脳におけるグルタミン酸トランスポーター遺伝子では、EL[s].EL[ns]GLT-1のmRNA発現がddYの場合より増大した。GLAST、EAACIのmRNAは3群間で発現の相違は認められなかった。またIn situe hybridizationにおいてはGLT-1 mRNAはEL[s]とEL[ns]とが海馬と大脳皮質とでddYより発現が強く認められた。GLASTとEAACIは3群間で発現に差異は観察されなかった。これらの結果はGLT-1が発作感受性に関与することを示唆している。ELマウス脳では遺伝的にグルタミン酸の合成が活発であり、シナップス間隙でのグルタミン酸の増加を生じている。そのため、神経細胞の興奮が生じ、発作感受性が亢進すると推測される。それに伴い、GLT-1の活性は増大し、グルタミン酸の取り込みも増加し、ホメオスターシスにより発作を減少させようとするが、それにも拘わらずなおグルタミン酸量が高く保持されるので、十分な発作制御が行われなくなり、ELマウスの発作感受性が高くなると考えられる。
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