[目的]児童期発症分裂病のうち、前駆期に強迫症状を呈する群は呈さない群に比べで器質的障害を有している可能性が高く、神経発達障害との関連性が示唆されるのではないかと考え、頭部MRIにおける脳の形態学的異常に関して調査した。 [対象と方法]対象は奈良県立医大精神科を受診し、発症年齢が15歳以下でDSMIVにて精神分裂病と診断された患児のうち、本人及び保護者の同意を得てMRI検査が施行された22例である。このうち前駆期に強迫症状を有する群(強迫(+)群)有さない群(強迫(-)群)12例に大別し、この両群の脳室拡大を線分法により比較検討した。またPANSSによる症状評価を行い、PANSS脳室拡大との関連性について検討した。 [結果]1.強迫(+)群は強迫(-)群に比べて、側脳室前角比を示すIndexIと第三脳室比を示すIndexIIにおいて有意に増大していた。2.全症例における頭部MRI所見とPANSS症状評価との相関関係については、IndexIとIndexIIにおいて総合精神病理得点との間に有意な正の相関が認められた。3.PANSS症状評価に関して、強迫(+)群は(-)群より有意に陰性得点と総合病理得点が高く、構成得点(陽性-陰性)が有意に低かった。4.年齢、発症年齢、前駆期間、罹病期間と頭部MRI所見との間に有意な相関は認められなかった。 [今後の展開]平成9年度はさらに症例を追加し、脳実質部分の面積をコンピューターで計測し、強迫(+)群と(-)群の比較のみでなく、対照群との比較検討も行い検討する方針である。
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