長期にわたる閉鎖空間での共同生活がどのような精神的影響を与えるのかを明らかにするため、つくば宇宙センターの宇宙飛行士養成棟において実験を行った。8人の被験者に宇宙ステーションを模した閉鎖環境適応訓練設備(閉鎖空間)に、48時間入室してもらい実験を遂行した。被験者は精神・身体的諸検査を通して選抜された健康な8人(男性7人、女性1人)であり、彼らは4人づつの2グループに分けられ、同時に閉鎖空間に入室した。各グループは生活時間を12時間シフトすることにより、グループの独自性を保った。2グループの行動は常時2人以上の精神科医により4台のテレビモニターを通して観察された。被験者のスケジュールは作業時間・自由時間・食事時間・睡眠時間でありあらかじめつくられたスケジュールに従い行動してもらった。閉鎖空間入退室の直前直後に内科的・精神科的診察、P300の測定、心理テストが施行された。閉鎖空間内での作業としては、ワープロ打ち込み(ドイツ語)、テレビゲーム、日記記帳、討論会があり、その間複数回にわたり心理テスト(内田クレペリンテスト、不安攻撃テスト)、感想も含む問診が行われた。24時間蓄尿から尿中モノアミンの測定も行った。結果:P300の潜時は長くなり、N1は変化があまりなかった。尿中モノアミンとその代謝産物(24時間蓄尿)は一日目より二日目の値が低下する傾向にあった。内田クレペリン検査では非定型の傾向を示し、メンバーにより動揺率が高かった。不安攻撃テストは状況(疲労度が高い時など)によって比較的素直に不安・怒りをあらわしていた。しかし、心理テストよりも直接の観察の方が被験者の心理状態を把握するのに有効であった。一対一の問診、日記は比較的心理状況を反映していた。
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