研究課題/領域番号 |
08671108
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
高橋 正 順天堂大学, 医学部, 助手 (30236294)
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研究分担者 |
新井 平伊 順天堂大学, 医学部, 教授 (50167988)
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キーワード | カルシウム結合蛋白 / カルビンディン / トランスジェニックマウス / アンチセンス遺伝子導入 / in situハイブリダイゼーション / 免疫組織化学法 / パルブアルブミン / アルツハイマー型痴呆 |
研究概要 |
カルシウム結合蛋白であるカルビンディンD_<28K>(CB)のアンチセンス遺伝子を導入したトランスジェニック(Tg)マウスは、発生過程において致死的となることなく生育したが、特にhomozygoteではやや拙劣な運動を認めることがあった。昨年度(平成8年度)は、生後3か月齢の時点でのTgマウス脳におけるCB mRNA発現が小脳プルキンエ細胞の軽度減少を除いてノックアウトおよび顕著な減少を引き起こすことをin situ hybridization法により月齢・性別・体重を統計学的に一致させた正常対照野生型マウス脳と比較し報告した。本年度(平成9年度)は、第一にTgマウス脳内におけるこのCB mRNA発現の加齢による経時的な変化を調べた。生後12か月齢と20か月齢のTgマウス脳では、加齢にしたがって全般性にCB mRNA発現の軽度の減少を認め、野生型マウス脳における経時的な減少率よりやや強い傾向は示したものの統計学的な有意差には至らなかった。生後3か月齢のTgマウス脳のCB mRNA発現パターンは、これらの経時的観察でもほぼ保たれていた。第二に、生後3か月齢のTgマウス脳における抗CB抗体陽性細胞数の密度は、同月齢の野生型に比較して各部位ともmRNA発現パターンと一致した減少を示した。加齢による経時的変化も同様の結果であった。さらに他のカルシウム結合蛋白であるパルブアルブミン(PV)について抗PV抗体陽性細胞数の密度を調べたところ、各月齢においてもTgマウス脳でのPV発現は野生型と有意差はなく、減少および代償機構による増加などは認めなかった。第三に、各月齢における神経病理学的検索(Nissl染色・HE染色・渡銀染色・Holzer染色)を行なったが、神経細胞脱落、細胞構築の乱れ、グリアの増生などは認められなかった。アルツハイマー型痴呆脳に特徴的な神経病理所見の出現は現在までのところ得られていないが、来年度は本Tgマウス系の記憶・学習に関連した行動学、神経心理学、生理学的な検索を予定している。
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