研究課題/領域番号 |
08671109
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
精神神経科学
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
池淵 恵美 帝京大学, 医学部, 助教授 (20246044)
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研究分担者 |
広瀬 徹也 帝京大学, 医学部, 教授 (10101742)
佐々木 隆 帝京大学, 医学部, 助手
沼口 亮一 帝京大学, 医学部, 助手 (10307192)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1998
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キーワード | 精神分裂病 / デイケア / 能力障害 / 精神科リハビリテーション / 再発 / 障害 / disablement / community work shop |
研究概要 |
本研究は以下の仮説の検証を目的に平成8年度より3年間実施した。 『精神分裂病の治療において、薬物療法に加えてデイケアで包括的なリハビリテーションを実施することで、薬物療法単独よりも能力障害の改善及び再発防止の効果が大きく、その結果、社会的な予後の改善が期待できる。』平成8年度は共同研究施設からの協力研究者による研究計画の検討と、評価実施者への説明及び評価訓練を2回実施した。平成9年1月より追跡調査を開始し、平成10年度、平成11年度にわたり引き続き追跡調査を実施中である。 1、対象:主治医により精神分裂病と診断されたもので、首都圏にある病院付設のデイケア7カ所及び小規模作業所8カ所に、平成9年または平成10年の2年間の間に利用を開始したもののうち、文書による同意を得られた者。平成9年中にデイケア42例、作業所10例が対象として登録され、平成10年中にデイケア20例、作業所10例が追加された。そのうち追跡調査が可能となった合計80例の内訳は、男性52例、女性28例。平均年齢33.8歳、平均発症年齢24.0歳、過去の平均入院回数及び通産入院月数1.9回及び17.4月である。 2.方法:利用開始後2年間、半年ごとに次の評価を行う。A.LASMI(精神障害者社会生活評価尺度)-能力障害の変化の追跡。B.GAS(概括評価尺度)-全般的な社会的機能の評価。C.WHOのQOL尺度-社会的な生活の質の評価。D.BPRS(簡易精神症状評価尺度)-精神症状の変化の追跡。半年ごとの定期評価以外に、デイケアや共同作業所からの脱落時と、精神症状が悪化するなど再発の可能性があるときにも同様の評価を行う。 3、結果及び考察: 今回の縦断研究は2年間にわたって生活障害の変化を追跡するものであり、わが国において先駆的な研究といえよう。しかし今回の報告の時点では、1年間の追跡が終了しているケースは登録ケースの1/3を下回っている。そのために、今回は1年目までの追跡結果を報告するにとどまった。開始時点では両群の間に諸属性、生活障害の程度、主観的QOL、全般的社会適応度に有意差がないが、利用開始半年後の時点で、デイケア群は開始時点と比較してE・持続属性、安定性で有意な改善を示し、作業所群との比較では、I・対人関係とW・労働または課題の遂行が有意によい得点を示した。また開始1年後の時点では、開始時点と比較してデイケア群はD・日常生活が有意な改善を示した。デイケアにおいては、治療集団に安定して適応した後で、日常生活が改善すること、作業所群との比較では対人関係と作業・課題遂行能力の改善がみられることが判明した。LASMI得点が全般的に改善した例(対象全体の半年後には82%、1年後では76%)だけを取りだして解析したところ、半年後の評価では対人技能、課題の遂行、社会資源の利用が有意に改善していた。1年後の評価でさらに改善が続いていたのは、対人技能のみであった。デイケア群、作業所群に限らず全般的な生活障害の改善がみられる例では、対人技能の改善が半年後、1年後にみられることが特徴といえよう。半年後の評価の変化において、LASMIのD・日常生活と、WHOQOLの心理領域との間に有意な相関がある。
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