研究概要 |
アルツハイマー型痴呆の脳に出現する老人斑で“アミロイドの塊の中にグリア線維の細い束がよく入り交じり,変性神経突起は殆ど認められない"という基準をみたす“アミロイド斑(以下APと略)"を7剖検例を用いて検索し,以下の結果をえた. (1)組織学的研究:APが広範に出現する2症例では,APは変性の強い側頭葉と頭頂葉に多く,また脳回の谷部に多数出現する傾向があった.3症例では,側頭葉・頭頂葉などの脳回の谷部にわずかに出現していた.APが全く出現しない例が2例あった.経過が20年にわたる長期経過例でも少数しか出現しない例があり,臨床経過との関連性は乏しいと思われる. (2)免疫組織化学的研究:抗βアミロイド抗体(residues8-17を認識)ではこのアミロイドは陽性に標識された.抗GFAP抗体ではAPの周囲とAPの中に細かく入り込む星状膠細胞の細い突起が染色された.抗タウ抗体ではAPの周囲に陽性反応を示す変性神経突起がごく少数確認された. (3)超微形態学的研究:グリア線維束からなる星状膠細胞の細い突起がアミロイドの中心まで侵入し,アミロイドを区画する像が観察された.定型斑では星状膠細胞由来と推測される突起はアミロイドの周囲に認められるが,グリア線維を持つことは稀であることから,検索対象とした2例のAPの特殊性が確認された.また,星状膠細胞の突起の一部がglial filamentsとともにpaired helical filaments (PHF) に類似する異常細管構造をもつことを,APを多数有する症例と少数持つ症例各1例で見いだした.これは星状膠細胞由来のグリアタングルである.この微細構造を 詳細に検索し報告した. (4)Gallys電顕と免疫電顕による研究:星状膠細胞の突起内の異常細管が嗜銀性をもち,また抗タウ抗体に陽性を示し,PHFと類似することを明らかにした.
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