精神分裂病においては、様々な病的な体験が認められるが、これについての生理学的な基盤は明らかになっていない。我々は、大脳皮質における情報処理という観点から精神分裂病の情報処理以上について、脳波の速波成分の出現、および部位間の関連という点から明らかにすることを目的として本研究を行っている。 本年度の目標として、情報処理を担う脳波の特徴抽出を行うことを掲げた。これに向けて、本年度は2つのことを行った。一つは、てんかん外科の手術対象者で、大脳皮質に直接電極をおいた(硬膜下電極)患者に対し、承諾を得た後、覚醒時および睡眠時の脳波を記録した。もう一つは、得られた脳波信号を解析するために経時的に変化する脳波のスペクトルをモニターする方法の開発を行った。 皮質脳波は、筋電図等のアーチファクトが殆どはいらないため、速波帯域の活動を観察するのに非常に好都合である。これを用いた結果、これまで我々が報告したREM睡眠期に特徴的に出現する20-28Hの波が、眼窩前頭葉皮質に優位に覚醒時や浅い睡眠時にも強く出現していることがわかった。これについては、1997年の米国睡眠学会において報告する。 解析方法については、文部省統計数理研究所の予測制御部門の石黒教授、瀧沢助教授との共同研究にて、瞬時化最大エントロピー法を脳波に適応することに成功し、上記の波がREM睡眠中には周期的に出現すること、安定した周波数を保っていることなどが明らかになった。これについては、英文にて論文発表される。
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