脳波ガンマ(40Hz)活動は大脳皮質の情報処理の統合に関連した活動として神経科学者の注目を集めている。しかしながら先行研究は主に動物を用いておりヒトで大脳皮質の情報統合については明らかになっていない。本研究では、まずてんかん手術の適応決定のために皮質を電極を装着された患者を対象として、皮質脳波の測定を行い皮質の電位計測によって脳の各部位でどのような波が出ているのかを明らかにした。その結果、ヒトの海馬傍回から測定される皮質脳波においては同時に記録した側頭葉下面にくらべ、30-150Hzの帯域のパワーが特徴的に増加していた。脳波の原波形においても、90Hz前後の比較的規則的な律動が観察された。この帯域をガンマ帯域(今後ガンマ帯域を、40Hzに固定せず30Hz以上の高周波帯域を広く呼称する名称とする)と呼ぶが、ガンマ帯域は海馬傍回でも前方よりは後方により強く発現される傾向がみられた。また、後頭葉に電極を装着した一例では開閉眼時に開眼でこのガンマ帯域が増強される現象が観察され、この帯域の活動が側頭葉内側だけでなく大脳皮質一般に広く認められる活動であることがわかった。また最近この周波数と一致するガンマ活動が通常の頭皮上脳波でも記録されるという報告があり今後このパラダイムを皮質脳波と頭皮上脳波の双方に用いて比較し、その意味付けを明らかにしながら、分裂病患者に応用していく。
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