[目的]lipopolysaccharide(LPS)を末梢投与すると血中のサイトカインが増加するが、同処置は脳内のサイトカインの合成・分泌をも促進することが知られている。したがって、LPSによるCRH-ACTH系の活性化機構、特にそのtime domainから観た場合の末梢血中および脳内サイトカインの関与様式の詳細は現在なお明らかではない。このことを検討する目的から、今回我々はLPS静注後の血中ACTHとサイトカイン[interleukin(IL)-1β、tumor necrosis factor(TNF)-α]、および視床下部(室傍核、PVN)でのCRH、IL-1β、TNF-αの変動をpush-pull perfusion (PPP)法を用いて同時に観察した。[材料と方法]Wistar-今道系の雄ラット(350-400g)を用い、PPPの7-10日前にpullカニューラをPVNにimplantした。PPPの2日前には採血用頚静脈カテーテルを留置した。PPP当日の11:00から17:00まで30分毎にperfusateの採取と採血を行った。12:00にLPS(1mg/kg)をbolusで静注した。controlにはvehicleのみを投与した。[結果]LPSの静注後血中のIL-1βとTNF-αはともに有意に増加したが、TNF-αはIL-1βに比しより早期に上昇した。PVNでのCRHはLPS投与後30分で有意に増加したが、同部位でのIL-1βは終始測定感度以下であった。PVNでのTNF-αはLPS投与後60分で有意に増加したが、その頂値の出現はPVNでのCRHや血中TNF-αの上昇よりも遅れていた。[結語]今回検討したサイトカインの中で、LPS静注後のCRH-ACTH系の活性化に最も早期に関与するのは末梢血中TNF-αである可能性が高い。その後のCRH-ACTH分泌には脳内TNF-αや末梢血中IL-1βの関与も示唆されるが、脳内IL-1βの関与を示唆する成績は得られなかった。
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