炎症性サイトカインのひとつであるinterleukin(IL)-1βによるadrenocorticotropin(ACTH)分泌がindomethacinの前投与により有意に抑制されることは多くの研究者により報告されており、この成績はIL-1βによるACTH分泌にprostaglandinが促進的に関与していることを示唆するものと考えられてきた。しかし、このindomethacinの作用機序については、RivierとValeにより否定的な報告がなされていたので、このことを再検討した。その結果indomethacinはやはり従来報告されているように、prostaglandinの合成抑制を介してIL-1βによるACTH分泌を抑制していることを示唆する成績を得た。 グラム陰性菌の細胞壁構成成分であるlipopolysaccharide(LPS)の末梢投与はACTHの分泌を亢進させる。このACTH分泌は主に末梢血中IL-1の上昇によりもたらされると考えられていたが、LPSにより上昇した脳内内因性IL-1の関与も否定されてはいなかった。また、LPSの脳室内投与がACTHを分泌させるか否かについてはこれまで明らかではなかった。したがって、脳内内因性IL-1の阻害作用を持つIL-1receptor antagonist(ra)を用いて、これらのことを検討した。その結果、LPSの脳室内投与はACTH分泌を有意に促進させ、この反応はIL-1raの脳室内前投与により有意に抑制されること、またLPSの静脈内投与によるACTH反応はIL-1raによっては抑制されないことを見い出した。これらの成績から、LPSの脳室内投与によるACTH反応には脳内IL-1の関与が重要であること、さらにLPSの静脈内投与によるACTH反応への脳内IL-1の関与は、少なくともその早期反応については少ないことが示唆された。
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