研究概要 |
本研究は慢性低Na血症時およびその急激な補正時に発生する浸透圧性障害であるOsmotic Demyelination(脱髄)の成立機構に果たす脳内活性アミノ酸(AA)と一酸化窒素(NO)の役割を検討する目的で行われた.昨年度はDDAVP投与によって作成したSIADHラットを用いて,慢性低Na血症時には抑制性AAのGABAは低下し,興奮性AAのGlutamateおよびGlycineは増加しており急激な浸透圧補正時に興奮性AAが減少する事を脳内微小透析法(microdialysis;MD)により明らかにし、中脳から橋にかけて中心部に脱髄がみられることを示した.即ち,脱髄の成立機構に興奮性AAを伝達物質とする神経活動が関与することが示唆された.今年度はこの結果を受けて,慢性低Na血症時およびその急激な補正時における脳内NO濃度についてMD法を用いて検討するため以下の実験を行った.方法:10週齢のSDラットの皮下に浸透圧ミニポンプを植え込んで一週間にわたりDDAVPを投与して低Na血症を作成した.MD probeを視床下部に挿入し,翌日意識下にprobeをリンゲル液で灌流した.2.5M NaCl(HS)の持続静注前,30分後および60分後の計3回灌流液を採取した.採血および血圧測定を同時に行い,実験終了後,経心的に脳をホルマリンで灌流固定して摘出した.結果:DDAVP投与2日目から低浸透圧性低Na血症が持続し,7日目のHS投与後60分で血清Na濃度および血清浸透圧は正常化した.組織学的検索ならびに灌流液中NO濃度測定については現在進行中である.興奮性AAの増加に基ずく組織障害性NOの産生増加が予想される。
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