(1)ラット腹腔マクロファージにおけるコレステロール代謝とSCP2による調節 ラット腹腔マクロファージが変性LDLを貪食して泡沫細胞化する過程でSCP2が増加する機構について解析した結果、ラット腹腔マクロファージでは変性LDLのスカベンジャー受容体への結合ではなく、変性LDLによる細胞内コレステロールの増加がSCP2の遺伝子発現を増強することがはじめて明らかになった。そこで、泡沫細胞形成において誘導されるSCP2がマクロファージにおける脂質にどのように関与しているのかを明らかにする目的でSCP2の過剰発現細胞をもちいた実験系およびアンチセンス法によりSCP2の誘導を抑制する実験系の確立を行った。用いた細胞はマウスマクロファージ由来のJ774細胞とヒトマクロファージ由来のTHP-1細胞である。すでにクローニングしたヒトおよびマウスSCP2のcDNAのアンチセンスをもちいて、持続発現型のベクターと誘導発現型のベクターにそれぞれ組み込んだ。つぎにJ774細胞およびTHP-1細胞にそれぞれベクターを導入し、導入細胞を選択した。今年度はこれらの細胞のうちSCP2を過剰発現した細胞をもちいてSCP2の増加がマクロファージコレステロール代謝にどのような影響を与えるか検討を行った。その結果、SCP2はACATによるマクロファージのコレステロールエステル化反応を促進する事が明らかになった。 2.ヒト動脈壁におけるSCP2の分布とその発現に関する解析 動脈硬化巣の形成においてSCP2がどのような役割を果たしているか、とくに泡未細胞形成におけるSCP2の役割を明らかにするため、ヒト血管壁におけるSCP2の分布を免疫組織学的手法をもちいて解析する方法を確立した。まずヒトSCP2のクローニングをおこない、これをGSTとの融合蛋白として大腸菌に発現させ、分離精製した物を抗原として家兎に免疫し抗SCP2抗体を精製した。この抗体をもちいて、まずヒト肝臓のSCP2のWestem blotをおこないその検出感度と特異性の検討を行った結果、ヒトSCP2の特異的抗体として十分使用に耐えることが明らかになった。
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